2009年07月05日
★カルチュラル・タイフーン報告/芸術創造と公共性~地域
よこはま若葉町多文化映画祭の周辺企画の考察のため、カルチュラル・タイフーン2009 / INTER-ASIA CULTURAL TYPHOONに行ってきた。


▲外語大に入るなり、タイの坊さん?が二人でペットボトルを飲んでいた。
+++++++++++++++++++++
アジアにおけるカルチュラルスタディーズ
――その過去、現在、未来
グローバリゼーションの破断点で問う文化のポリティクス
――貧困、監視、検閲を超えて
カルチュラル・タイフーン(文化台風)とは、この運動の準備会議の際に本当に台風が襲来したエピソードにちなんで命名されたのですが、その志は、自分たちが文化研究の学問的ルーティンワークのなかに萎縮してしまう傾向に注意深くありたい、そしてある種の知的台風として、思想的な異議申し立てという雨風をもたらす存在でありたいというところにありました。(中略)
カルチュラル・スタディーズの本来の批判性を大切にするこのような知的交流の経験は、今年は、それ自体も十年目を迎えたIACSの流れとひとつになって、まさに「カルチュラル・スタディーズ2.0」とでもいうべきもの発展したいと念じています。
新自由主義が吹き荒れる現代世界において、グローバル化の破断点はいたるところにむき出しになってきました。そうした現場にはきまって文化の抑圧、横領、消去が起こっているのですが、同時にまた、その危機の中からさまざまな抵抗と新しい表現も生まれだしています。わたしたちは、まさにそうした文化のポリティクスの動態を、今回の大会を貫く「カルチュラルスタディーズとアジア」という視点から、あらためて捉えなおします。
Inter-Asia Cultural Typhoon 2009 実行委員会
会期:2009年7月3日(金) 18:00 – 20:00
4日(土)、5日(日) 9:30 – 18:30
会場:東京外国語大学 研究講義棟
料金:パネル参加者・・・有職者5000円/学生・非正規雇用2000円
シネマ、ブースのみ・・・無料
* ご来場に関しまして、特に資格・条件等はございません。
* 全ての来場者には、ご入場の際に受付で氏名等をご記入いただきます。
* パネル参加者には、参加費と引き換えに氏名タグおよびプログラムをお渡しします。タグのない方は、パネル・ディスカッションに参加できません。パネル参加者タグは3日間通して有効です。
* カルチュラル・タイフーンでは、大会当日の参加費が事実上の大会運営費となっております。みなさまのご理解とご協力をよろしくお願いいたします。
共同開催:カルチュラル・タイフーン2009実行委員会
The Inter-Asia Cultural Studies Society
東京外国語大学海外事情研究所
カルチュラル・タイフーン・サイト

▲校舎内のメイン通路にいくつかのブースがでている。
外の広場ではバンドが演奏していた。
想像に反してほとんど人がいなかった…。
なので、Our Pranet TVの木村静さんには、大学に着いたとたんに出会うことができた。
「パネル」と呼ばれる発表がメインプログラムで、たとえば16:30~18:10の間だけでも、11の会場でそれぞれ関連の発表が1~3ずつされていて、そのパネルとパネルの間の休み時間にドッバーと人が出てくるらしい。
オーバ「ヅ」は、そのうちのひとつのパネルに参加した。
パネルに参加するには、上記参加費が必要だ。
参加費を払うときに「正規雇用者ですか?」と聞かれる。
「任意団体を運営するアーティストです」
というと、「非正規雇用者料金=2000円」が適用される。
よこはま若葉町多文化映画祭でも、参加団体がそれぞれのポリシーから割引料金を適用したらおもしろいかもしれない。
たとえば、年齢、性別、雇用形態、人種、障害などにより、タイ・ラーメンの値段が変わるというように。
+++++++++++++
ヅが参加したパネルはこちら↓
Arts and Commonality: ContemporaryArts Projects in Urban/Regional Societies
芸術創造と公共性~地域/都市社会における「芸術によるまちづくり」の可能性
本パネルでは、今日の「芸術と社会」との関係性について議論していくことが中心的なテーマ
となる。特に、近年顕著に増加傾向にある「アートプロジェクト」や「国際展」について。また、
そのようなプロジェクトのなかで度々観察される表現形態である「社会と関わる芸術」「リレーシ
ョナル・アート」に関する諸問題。さらにはそれらの文化事業や芸術支援に深く関わる「芸術に
関わる文化政策」や「都市政策」。これらについて各パネリストが議論しながら、現在の芸術と社
会との関係性、あるいは芸術をめぐる公共性の問題について検討していく。
Panelist 1 :Motohiro Koizumi 小泉元宏(Tokyo University of theArts, PhD Student)
Title Transformation of Artistic Expression in 1990s-2000s: With Reference to “Relational Art” in
CommunityArts Projects
Panelist 2 :Ayako Matsumoto Katsumura 勝村(松本)文子
Title Does Art have the power to activate the community?
Panelist 3 :Hideaki Sasajima 笹島秀晃(Tohoku University, Doctoral Student)
Title What do Recent Urban Policies Require of Art? : Analysis of Space-Oriented Cultural Policies
+++++++++++++++
なんと、コメンテーターとして、CREAMヨコハマ国際映像祭のキュレーター遠藤水城さんがいた。
なんと、コトブキ・クリエイティブ・アクションに参加しているアーティストの増本泰斗さんも参加者席に座っていた。
*増本さんは他のブースで作品を上映するはずなのだが、客が集まらず、スタッフが客を集めてくるのを待っているという。。。
内容は、アサヒ・アート・フェスティバルをはじめとしたアートプロジェクトについての考察(小泉元宏)、クリエイティブシティーを横浜市の例から考察(笹島秀晃)、アートプロジェクトの市民側の検証についての発表( 勝村(松本)文子)と、まさに、オーバのためにあるかのような内容で、大満足。
勝村さんは、勝村さんが検証した妻有トリエンナーレの研究結果を送ってくれるそうですし、笹島さんは、今後もっと横浜の事例を研究したいということで、今後もなにか協力しあうかもしれません。
いやあ、本当に、地域でおこなうアートプロジェクトは、検証する視点が多すぎて複雑なんですよねー。
このパネルでも、ほとんどが、地域への還元とか、そういう検証に動いてしまうように、どうしても、「アート」よりも「地域」のほうが価値をおかれてしまいがちで、それなら、「アート」じゃなくて「地域振興まちづくりプロジェクト」でいいじゃない?って思ってしまう。
一般的には、ヴォッヘンクラウズールのような「アートプロジェクト」は、「地域振興」であって、何が「アート」なの?思われがち。
一方で、ホワイトキューブで展開できる「アート作品」をわざわざ「地域」にもっていて、展示までの過程を地域住民とシェアし結果的に地域振興になっているという場合や、行政主導で地域型アートプロジェクトにアーティストが召集された場合では、表層上、まるで「アート」と「地域振興」どちらもあるように見えてしまう。
だけど、後者の場合、アートが地域に利用されたり、また、アートが地域を利用していたり、そこに本質的な「アート」を見出すことが難しい場合が多い。
福岡におけるヴォッヘンクラウズールのプロジェクト報告書
やはり「アートプロジェクト」は、「アート」と「地域」の必然と考察がともにあるべきで、アーティストは、ホワイトキューブを出たことにより、より「アート」を意識する必要があるのではないか。
妻有トリエンナーレ2006の場合、多くの作家たちは、すごく考えてあの場に挑んでいたであろうし、安易さなどなかったはずなのに、古民家や田んぼの風景など場の力が強く、結果的には、「アート」がなかったほうが、美しかった。と感じた場面がいくつもあった。
知人のフランス人のアーティストも「「アート」があるというのでわざわざいったけれど、行ってみたら、アートが邪魔だった。でも、アートがなかったら妻有にはいかなかった。」とその矛盾に考え込んでいた
それが北川フロムさんの戦略なのかどうかは知らないが、よく考えてみると妻有の作品は、視覚的な強度が強すぎたのではないか?と思えてきている。
どの作品も、フォトジェニックで、視覚化されていないプロジェクトがないのだ。
それが、観客を呼び寄せている重要な要因になっているのだろうけれど、結果的に、それが、場の空気とアートの距離を離してしまっているように感じる。
ヴォッヘンクラウズールの例からもわかるように、アートプロジェクトは必ずしも視覚的である必要はない。
でも、視覚的インパクトのないアートフェスティバルをいたずらに広報し、多くの観客を呼ぶ必要があるのだろうか?
そのあたりも含めて、めちゃくちゃ、バランスが難しく、日一日と会期が近づく横浜下町パラダイスまつりについて考えはじめると、気持ちがびびります。
+++++
▼参考
「アートプロジェクトによる地域づくりに関する研究」 勝村文子
芸術を用いた地域づくりに関して、その効果と可能性について事例研究を通じて考究したものです。芸術を用いた地域づくりは、近年、事例数の増加や社会からの注目にもかかわらず、評価が難しいという点から事業継続の根拠となる効果について科学的な検証が行われていない。
この論文は、住民を対象とした質的調査と量的な統計分析を組み合わせることにより、芸術を用いた地域づくりの効果とその要因について様々な角度から明らかにして、アートプロジェクトによる地域づくりについて、実証的かつ科学的に論じたものです。
*AAFでも事後検証、アートプロジェクトをどう評価するかに苦労しているみたいです。
こういう様々な角度からの検証は重要ですね。
笹島 秀晃
部屋を出る。小泉元宏のブログ

▲メイン通路に、「フシアナ喫茶ー音楽実験編」というのがあった。

▲東京芸大の生徒による実験。
実験に参加して、50円割引になった紅茶も飲んだ。
*でも、最終的に、この実験がどうなるのか、どこで結果を共有できるのかなどの説明がまったくなく、アートの実験ではなく、まるで新薬の被験者のような気分になった。

▲なんと横浜下町パラダイスまつりに参加する「カフェ・エノアール」の映像上映会もあった!
いちむらみさこか、小川てつオがいるのかと思って、講義室を開けたのだが、実際には、カフェ・エノアールの二人どころか、観客のひとりもいず、実行委員ふたりがちんまりと上映して鑑賞していた。
やはり、プログラムがありすぎる…。
18:30に最後のパネルが終わり、しばらく参加者の人とかと話していると、もう、学校退出の時間。
さすが大学。
校庭にでると、遠藤水城さん、増本泰斗さんのみならず、藤井光さんもいる。
そのとなりの見知らぬ青年に声をかけると、なんと、彼は数年前にオーバQナイトに来てくれた「アブラウリ」だった!
「おもしろかったので、またぜひオーバQナイトに行きたい」というので、次回8月1日(土)に来てくれるかもしれません。
アブラウリ以外は、全員、今、横浜のアートプロジェクトに関わっている人たちなのだが、結局、新宿で全員と別れた。
きょうのメンツで、横浜在住で横浜のプロジェクトをやっているのはオーバだけかー。
結局、多文化映画祭のために、多文化まつりの雰囲気だけでも参考にできれば、と訪れたものの、すっかり内容にはまってしまい、横浜下町パラダイスまつりの考察となった1日でした。
+++++++++
▼時空芸術研究会
現在、このブログでのやりとりを通じて、時空芸術研究会番外編@横浜下町パラダイスまつりが開催できないか調整中です。
▼横浜下町パラダイスまつり*よこはま若葉町多文化映画祭
●会期 2009年8月22日(土)〜8月30日(日)
(映画館での映画祭は8月28日(金)まで)
●会場 1)シネマ・ジャック&ベティ
シネマ・ジャック&ベティ・カフェ
横浜市中区若葉町3-51
2)横浜市中区若葉町界隈の商店
●主催 ART LAB OVAアートラボ・オーバ
*アーティストがへんてこかわいいことをしているプロジェクト
http://artlabova.org
よこはま若葉町多文化映画祭実行委員会
●共催 シネマ・ジャック&ベティ
*横浜最後の名画座とミニシアターをもつまちの映画館
http://www.jackandbetty.net/



▲外語大に入るなり、タイの坊さん?が二人でペットボトルを飲んでいた。
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アジアにおけるカルチュラルスタディーズ
――その過去、現在、未来
グローバリゼーションの破断点で問う文化のポリティクス
――貧困、監視、検閲を超えて
カルチュラル・タイフーン(文化台風)とは、この運動の準備会議の際に本当に台風が襲来したエピソードにちなんで命名されたのですが、その志は、自分たちが文化研究の学問的ルーティンワークのなかに萎縮してしまう傾向に注意深くありたい、そしてある種の知的台風として、思想的な異議申し立てという雨風をもたらす存在でありたいというところにありました。(中略)
カルチュラル・スタディーズの本来の批判性を大切にするこのような知的交流の経験は、今年は、それ自体も十年目を迎えたIACSの流れとひとつになって、まさに「カルチュラル・スタディーズ2.0」とでもいうべきもの発展したいと念じています。
新自由主義が吹き荒れる現代世界において、グローバル化の破断点はいたるところにむき出しになってきました。そうした現場にはきまって文化の抑圧、横領、消去が起こっているのですが、同時にまた、その危機の中からさまざまな抵抗と新しい表現も生まれだしています。わたしたちは、まさにそうした文化のポリティクスの動態を、今回の大会を貫く「カルチュラルスタディーズとアジア」という視点から、あらためて捉えなおします。
Inter-Asia Cultural Typhoon 2009 実行委員会
会期:2009年7月3日(金) 18:00 – 20:00
4日(土)、5日(日) 9:30 – 18:30
会場:東京外国語大学 研究講義棟
料金:パネル参加者・・・有職者5000円/学生・非正規雇用2000円
シネマ、ブースのみ・・・無料
* ご来場に関しまして、特に資格・条件等はございません。
* 全ての来場者には、ご入場の際に受付で氏名等をご記入いただきます。
* パネル参加者には、参加費と引き換えに氏名タグおよびプログラムをお渡しします。タグのない方は、パネル・ディスカッションに参加できません。パネル参加者タグは3日間通して有効です。
* カルチュラル・タイフーンでは、大会当日の参加費が事実上の大会運営費となっております。みなさまのご理解とご協力をよろしくお願いいたします。
共同開催:カルチュラル・タイフーン2009実行委員会
The Inter-Asia Cultural Studies Society
東京外国語大学海外事情研究所
カルチュラル・タイフーン・サイト

▲校舎内のメイン通路にいくつかのブースがでている。
外の広場ではバンドが演奏していた。
想像に反してほとんど人がいなかった…。
なので、Our Pranet TVの木村静さんには、大学に着いたとたんに出会うことができた。
「パネル」と呼ばれる発表がメインプログラムで、たとえば16:30~18:10の間だけでも、11の会場でそれぞれ関連の発表が1~3ずつされていて、そのパネルとパネルの間の休み時間にドッバーと人が出てくるらしい。
オーバ「ヅ」は、そのうちのひとつのパネルに参加した。
パネルに参加するには、上記参加費が必要だ。
参加費を払うときに「正規雇用者ですか?」と聞かれる。
「任意団体を運営するアーティストです」
というと、「非正規雇用者料金=2000円」が適用される。
よこはま若葉町多文化映画祭でも、参加団体がそれぞれのポリシーから割引料金を適用したらおもしろいかもしれない。
たとえば、年齢、性別、雇用形態、人種、障害などにより、タイ・ラーメンの値段が変わるというように。
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ヅが参加したパネルはこちら↓
Arts and Commonality: ContemporaryArts Projects in Urban/Regional Societies
芸術創造と公共性~地域/都市社会における「芸術によるまちづくり」の可能性
本パネルでは、今日の「芸術と社会」との関係性について議論していくことが中心的なテーマ
となる。特に、近年顕著に増加傾向にある「アートプロジェクト」や「国際展」について。また、
そのようなプロジェクトのなかで度々観察される表現形態である「社会と関わる芸術」「リレーシ
ョナル・アート」に関する諸問題。さらにはそれらの文化事業や芸術支援に深く関わる「芸術に
関わる文化政策」や「都市政策」。これらについて各パネリストが議論しながら、現在の芸術と社
会との関係性、あるいは芸術をめぐる公共性の問題について検討していく。
Panelist 1 :Motohiro Koizumi 小泉元宏(Tokyo University of theArts, PhD Student)
Title Transformation of Artistic Expression in 1990s-2000s: With Reference to “Relational Art” in
CommunityArts Projects
Panelist 2 :Ayako Matsumoto Katsumura 勝村(松本)文子
Title Does Art have the power to activate the community?
Panelist 3 :Hideaki Sasajima 笹島秀晃(Tohoku University, Doctoral Student)
Title What do Recent Urban Policies Require of Art? : Analysis of Space-Oriented Cultural Policies
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なんと、コメンテーターとして、CREAMヨコハマ国際映像祭のキュレーター遠藤水城さんがいた。
なんと、コトブキ・クリエイティブ・アクションに参加しているアーティストの増本泰斗さんも参加者席に座っていた。
*増本さんは他のブースで作品を上映するはずなのだが、客が集まらず、スタッフが客を集めてくるのを待っているという。。。
内容は、アサヒ・アート・フェスティバルをはじめとしたアートプロジェクトについての考察(小泉元宏)、クリエイティブシティーを横浜市の例から考察(笹島秀晃)、アートプロジェクトの市民側の検証についての発表( 勝村(松本)文子)と、まさに、オーバのためにあるかのような内容で、大満足。
勝村さんは、勝村さんが検証した妻有トリエンナーレの研究結果を送ってくれるそうですし、笹島さんは、今後もっと横浜の事例を研究したいということで、今後もなにか協力しあうかもしれません。
いやあ、本当に、地域でおこなうアートプロジェクトは、検証する視点が多すぎて複雑なんですよねー。
このパネルでも、ほとんどが、地域への還元とか、そういう検証に動いてしまうように、どうしても、「アート」よりも「地域」のほうが価値をおかれてしまいがちで、それなら、「アート」じゃなくて「地域振興まちづくりプロジェクト」でいいじゃない?って思ってしまう。
一般的には、ヴォッヘンクラウズールのような「アートプロジェクト」は、「地域振興」であって、何が「アート」なの?思われがち。
一方で、ホワイトキューブで展開できる「アート作品」をわざわざ「地域」にもっていて、展示までの過程を地域住民とシェアし結果的に地域振興になっているという場合や、行政主導で地域型アートプロジェクトにアーティストが召集された場合では、表層上、まるで「アート」と「地域振興」どちらもあるように見えてしまう。
だけど、後者の場合、アートが地域に利用されたり、また、アートが地域を利用していたり、そこに本質的な「アート」を見出すことが難しい場合が多い。
福岡におけるヴォッヘンクラウズールのプロジェクト報告書
やはり「アートプロジェクト」は、「アート」と「地域」の必然と考察がともにあるべきで、アーティストは、ホワイトキューブを出たことにより、より「アート」を意識する必要があるのではないか。
妻有トリエンナーレ2006の場合、多くの作家たちは、すごく考えてあの場に挑んでいたであろうし、安易さなどなかったはずなのに、古民家や田んぼの風景など場の力が強く、結果的には、「アート」がなかったほうが、美しかった。と感じた場面がいくつもあった。
知人のフランス人のアーティストも「「アート」があるというのでわざわざいったけれど、行ってみたら、アートが邪魔だった。でも、アートがなかったら妻有にはいかなかった。」とその矛盾に考え込んでいた
それが北川フロムさんの戦略なのかどうかは知らないが、よく考えてみると妻有の作品は、視覚的な強度が強すぎたのではないか?と思えてきている。
どの作品も、フォトジェニックで、視覚化されていないプロジェクトがないのだ。
それが、観客を呼び寄せている重要な要因になっているのだろうけれど、結果的に、それが、場の空気とアートの距離を離してしまっているように感じる。
ヴォッヘンクラウズールの例からもわかるように、アートプロジェクトは必ずしも視覚的である必要はない。
でも、視覚的インパクトのないアートフェスティバルをいたずらに広報し、多くの観客を呼ぶ必要があるのだろうか?
そのあたりも含めて、めちゃくちゃ、バランスが難しく、日一日と会期が近づく横浜下町パラダイスまつりについて考えはじめると、気持ちがびびります。
+++++
▼参考
「アートプロジェクトによる地域づくりに関する研究」 勝村文子
芸術を用いた地域づくりに関して、その効果と可能性について事例研究を通じて考究したものです。芸術を用いた地域づくりは、近年、事例数の増加や社会からの注目にもかかわらず、評価が難しいという点から事業継続の根拠となる効果について科学的な検証が行われていない。
この論文は、住民を対象とした質的調査と量的な統計分析を組み合わせることにより、芸術を用いた地域づくりの効果とその要因について様々な角度から明らかにして、アートプロジェクトによる地域づくりについて、実証的かつ科学的に論じたものです。
*AAFでも事後検証、アートプロジェクトをどう評価するかに苦労しているみたいです。
こういう様々な角度からの検証は重要ですね。
笹島 秀晃
部屋を出る。小泉元宏のブログ

▲メイン通路に、「フシアナ喫茶ー音楽実験編」というのがあった。

▲東京芸大の生徒による実験。
実験に参加して、50円割引になった紅茶も飲んだ。
*でも、最終的に、この実験がどうなるのか、どこで結果を共有できるのかなどの説明がまったくなく、アートの実験ではなく、まるで新薬の被験者のような気分になった。

▲なんと横浜下町パラダイスまつりに参加する「カフェ・エノアール」の映像上映会もあった!
いちむらみさこか、小川てつオがいるのかと思って、講義室を開けたのだが、実際には、カフェ・エノアールの二人どころか、観客のひとりもいず、実行委員ふたりがちんまりと上映して鑑賞していた。
やはり、プログラムがありすぎる…。
18:30に最後のパネルが終わり、しばらく参加者の人とかと話していると、もう、学校退出の時間。
さすが大学。
校庭にでると、遠藤水城さん、増本泰斗さんのみならず、藤井光さんもいる。
そのとなりの見知らぬ青年に声をかけると、なんと、彼は数年前にオーバQナイトに来てくれた「アブラウリ」だった!
「おもしろかったので、またぜひオーバQナイトに行きたい」というので、次回8月1日(土)に来てくれるかもしれません。
アブラウリ以外は、全員、今、横浜のアートプロジェクトに関わっている人たちなのだが、結局、新宿で全員と別れた。
きょうのメンツで、横浜在住で横浜のプロジェクトをやっているのはオーバだけかー。
結局、多文化映画祭のために、多文化まつりの雰囲気だけでも参考にできれば、と訪れたものの、すっかり内容にはまってしまい、横浜下町パラダイスまつりの考察となった1日でした。
+++++++++
▼時空芸術研究会
現在、このブログでのやりとりを通じて、時空芸術研究会番外編@横浜下町パラダイスまつりが開催できないか調整中です。
▼横浜下町パラダイスまつり*よこはま若葉町多文化映画祭
●会期 2009年8月22日(土)〜8月30日(日)
(映画館での映画祭は8月28日(金)まで)
●会場 1)シネマ・ジャック&ベティ
シネマ・ジャック&ベティ・カフェ
横浜市中区若葉町3-51
2)横浜市中区若葉町界隈の商店
●主催 ART LAB OVAアートラボ・オーバ
*アーティストがへんてこかわいいことをしているプロジェクト
http://artlabova.org
よこはま若葉町多文化映画祭実行委員会
●共催 シネマ・ジャック&ベティ
*横浜最後の名画座とミニシアターをもつまちの映画館
http://www.jackandbetty.net/

★「拳銃」おじさん再び
★「ワルい子うちわ」の撤去と展示【門脇篤】
★切り絵「撤去」おじさん
★「尺八」「拳銃」変なおじさん偶然大集合!
★帽子おじさんパーティーキャンセル!
★飛行場だったころの若葉町の写真
★「ワルい子うちわ」の撤去と展示【門脇篤】
★切り絵「撤去」おじさん
★「尺八」「拳銃」変なおじさん偶然大集合!
★帽子おじさんパーティーキャンセル!
★飛行場だったころの若葉町の写真
Posted by ART LAB OVA at 23:59│Comments(2)
│・2009パラダイスまつりのプロセス
この記事へのコメント
東京芸大の小泉元宏です。
上記カルチュラル・タイフーンのパネルで,オーガナイザー(兼報告)をしておりました。
先日はご来場いただき,誠にありがとうございました。上記のブログ内容も興味深く読ませていただきました。
先日の発表では時間がなくて,突っ込んだ議論ができなかったのですが,私自身は地域活性化におけるアートプロジェクトが,目的化され使われてしてしまうこと,つまり「アートは地域活性化に役立つ」とする言説の行き過ぎに対しては一定の危惧を感じています。
【やはり「アートプロジェクト」は、「アート」と「地域」がともにあり、アーティストは、ホワイトキューブを出たことにより、より「アート」を意識する必要があるのではないか。】
とおっしゃる部分,私も大いに共感を覚えました。
上記で触れられていたヴォッヘン・クラウズールのメンバーたちは,私が行ったインタビュー内でも,彼らの活動のポイントが,ディスカッションを繰り返し綿密に重ねることにあり,そのあたりが単なる結果ありきの「地域貢献」とは違う,「アート」な部分であることを強調していました。
全体状況を見極めつつ,地域との「参加と距離化(エリアス)」のバランスを取りながら新しい「自律」をはかることが重要である,というのが私自身の現在の社会と関わるアート・プロジェクトに対して思うところです。
なお,先日発表をした3人+コメンテーターの遠藤さんは,芸大で定期的にやってる研究会「時空芸術研究会」のメンバーでもあります(URLご参照ください)。
院生3割,現場の方々4割,アーティスト3割ぐらいの感じでやってるオープンな研究会なので,ぜひよかったらお越しくださいませ。
それでは,またどうぞ宜しくお願いいたします。
追伸,ちなみに事前打ち合わせでは,おそらく数人ぐらいしかこないだろうから,みんなで議論しましょう,とか話していたぐらいでしたので,来場者の予想以上の数(それと遠●さんの大幅な遅刻)にはオーガナイザー的に冷や汗ものでした。
上記カルチュラル・タイフーンのパネルで,オーガナイザー(兼報告)をしておりました。
先日はご来場いただき,誠にありがとうございました。上記のブログ内容も興味深く読ませていただきました。
先日の発表では時間がなくて,突っ込んだ議論ができなかったのですが,私自身は地域活性化におけるアートプロジェクトが,目的化され使われてしてしまうこと,つまり「アートは地域活性化に役立つ」とする言説の行き過ぎに対しては一定の危惧を感じています。
【やはり「アートプロジェクト」は、「アート」と「地域」がともにあり、アーティストは、ホワイトキューブを出たことにより、より「アート」を意識する必要があるのではないか。】
とおっしゃる部分,私も大いに共感を覚えました。
上記で触れられていたヴォッヘン・クラウズールのメンバーたちは,私が行ったインタビュー内でも,彼らの活動のポイントが,ディスカッションを繰り返し綿密に重ねることにあり,そのあたりが単なる結果ありきの「地域貢献」とは違う,「アート」な部分であることを強調していました。
全体状況を見極めつつ,地域との「参加と距離化(エリアス)」のバランスを取りながら新しい「自律」をはかることが重要である,というのが私自身の現在の社会と関わるアート・プロジェクトに対して思うところです。
なお,先日発表をした3人+コメンテーターの遠藤さんは,芸大で定期的にやってる研究会「時空芸術研究会」のメンバーでもあります(URLご参照ください)。
院生3割,現場の方々4割,アーティスト3割ぐらいの感じでやってるオープンな研究会なので,ぜひよかったらお越しくださいませ。
それでは,またどうぞ宜しくお願いいたします。
追伸,ちなみに事前打ち合わせでは,おそらく数人ぐらいしかこないだろうから,みんなで議論しましょう,とか話していたぐらいでしたので,来場者の予想以上の数(それと遠●さんの大幅な遅刻)にはオーガナイザー的に冷や汗ものでした。
Posted by 小泉元宏 at 2009年07月10日 05:10
小泉さま
コメントありがとうございます。
>全体状況を見極めつつ,地域との「参加と距離化(エリアス)」のバランスを取りながら新しい「自律」をはかることが重要である,
まさに、そうですよね。
小さなアートプロジェクトは積み重ねてきましたが、今回のような「まつり」ははじめてなので、いったい何がどうなるか、まったく見えず不安です。。。
でも、がんばります。
あれから、遠○さんとは毎日お会いしています。
確かに、遅刻は大変でしたねー。(時間がもったいなかったですね。勝○さんももう少し短くできたような。。。)。
でも、あのバランス感覚だからこそ、創造的な場が生まれるのであろうと、感心させてもらっている日々であります。
会期が迫って切羽詰ったときの遠○さんが、楽しみです!
コメントありがとうございます。
>全体状況を見極めつつ,地域との「参加と距離化(エリアス)」のバランスを取りながら新しい「自律」をはかることが重要である,
まさに、そうですよね。
小さなアートプロジェクトは積み重ねてきましたが、今回のような「まつり」ははじめてなので、いったい何がどうなるか、まったく見えず不安です。。。
でも、がんばります。
あれから、遠○さんとは毎日お会いしています。
確かに、遅刻は大変でしたねー。(時間がもったいなかったですね。勝○さんももう少し短くできたような。。。)。
でも、あのバランス感覚だからこそ、創造的な場が生まれるのであろうと、感心させてもらっている日々であります。
会期が迫って切羽詰ったときの遠○さんが、楽しみです!
Posted by ART LAB OVA
at 2009年07月10日 06:50
